9世。李成桂の側近の一人か。
奉由仁(ほうゆうじん)の祖父は奉天祐で、奉質の次男である。高麗末期には、儒学者である李穡(りしょく)の孫を娘婿に迎え、姻戚関係を結んだ。
開城府尹の地位にあり、その後、李氏朝鮮建国者である李成桂に付き従い、都を開城から漢城(かんじょう)に遷都した際、漢城判尹を歴任した。
李穡:高麗末期、李氏朝鮮初期の文臣、儒学者。号は牧隠(ぼくいん)。朱子学発展に寄与。
府尹:重要な都市や地域の最高行政長官。知事や市長くらいか。
漢城:現在のソウル市。
判尹:最高行政長官の副官くらいか。
また奉由仁には李成桂との逸話が二つ伝わっているらしいが、原出典が見つかっていないので、恐らくその地元での口伝であろう。
第一は、奉由仁が李成桂と同行していた折、現在の高陽市にある山に差し掛かった際、雁が李成桂の衣服に糞をかけたが、奉由仁が飛んでいく雁を矢で射落としたという。
第二は、雁山の由来についてである。李成桂が威化島回軍を行い、三松里炭石峠に至った際、雁一羽が鎧に糞をして飛び去るのを弓で射落とした。その雁が落ちた地点が江高山麓前の丘陵であったが、雁の字を用いてこの場所を雁山と称するようになった。
これら逸話はいかにも忠実なる側近という印象である。李成桂の信頼が篤かったか、朝鮮王朝への恭順を訴求しているのか、いずれも真偽の程は不明である。
高陽市:ソウル市の北西に隣接する。
威化島回軍:1388年、李成桂が軍を威化島から開京に帰還させ、親元政権を倒した政変。
三松里砥石峠:高陽市にある峠。
雁山:高陽市にある江高山の丘陵。
江高山:高陽市にある山。
